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さて、今回は、最近続いている電車のひと編です。
前回は、忘れ物をしたご婦人がお客様でした。
surrealsight.hatenablog.com
過去の主なお客様はこちら↓
surrealsight.hatenablog.com
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今回のお客様は、満員電車であったひとでした。
では、どうぞ。
朝のラッシュ時に筆者は下りの神戸方面に乗るため、上りの大阪方面の寿司詰めに比べれば、幾分まだ込み具合がましだ。
筆者は支線から乗り換えて、この神戸線を使っていた。
朝の特急電車はやはり混んでいる。
しかし、まだ立っていても本が読めるくらいのパーソナルスペースは確保できるのでいい。
途中、西宮北口という大きなハブ的な駅があり、そこでまだ人がどっと乗ってくる。
今回のお客さんは、筆者としてはノーマークの人だった。
男性で、身長も170センチ位と目立たず、目の前の人の集団の中にいる、一人のひと、という感じだった。
電車はハブ駅を出発し、一駅はさんで、学生がよく利用している次の駅に向かう。
電車の車内は、皆、思い思いにスマホを見て、周りを見渡しているような人は筆者を除いていない。
筆者は、そういう集団において、身長が186のため、頭一つ抜けている。
やがて、電車は次の駅に到着した。
プシュー
とエアーが抜ける音がして、ドアが開く。
ドアの近くにいた何人かが降りていく。
いつものように日常的な光景だった。
と、その時
動くな
という声が、日常の空気を切り裂いた。
ホームに降りた170センチくらいの男性は、いきなり何人かに囲まれてもみくちゃになる。
ドア付近にいた乗客が、皆、一斉に顔を上げる。
目の前の光景は、それぞれの世界から引き戻された現実だ。
抵抗するな、おとなしくしろ
乗客は皆、目を見開いている。
捕まったな、警察に
筆者は状況を理解した。
ほんの十数秒くらいの感覚だった。
プシュー
という音がして、ドアが閉まる。
電車は何事もなかったかのように、普段通り発車する。
取り押さえられた人と、とりまきの人をホームに残して。
そうして、現実の非日常は強制終了された。
ガタンゴトンガタンゴトンと、電車はどんどん走っていく。
皆、共有したこの現実をどうしたらいいか、わからない。
そして、乗客は、また頭を下げてスマホを見だした。
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