ジローの部屋

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【電車のひと短編⑥】非日常はドアによって、幕を引く

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こんにちは、ジローです。

たくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!

おかげさまで、ぼちぼちとこのブログを続けられています。


さて、今回は、最近続いている電車のひと編です。
前回は、忘れ物をしたご婦人がお客様でした。
surrealsight.hatenablog.com
過去の主なお客様はこちら↓
surrealsight.hatenablog.com
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今回のお客様は、満員電車であったひとでした。
では、どうぞ。



筆者が使っている電車は、当時阪急電鉄神戸線だった。


朝のラッシュ時に筆者は下りの神戸方面に乗るため、上りの大阪方面の寿司詰めに比べれば、幾分まだ込み具合がましだ。


筆者は支線から乗り換えて、この神戸線を使っていた。


朝の特急電車はやはり混んでいる。


しかし、まだ立っていても本が読めるくらいのパーソナルスペースは確保できるのでいい。


途中、西宮北口という大きなハブ的な駅があり、そこでまだ人がどっと乗ってくる。


今回のお客さんは、筆者としてはノーマークの人だった。

男性で、身長も170センチ位と目立たず、目の前の人の集団の中にいる、一人のひと、という感じだった。


電車はハブ駅を出発し、一駅はさんで、学生がよく利用している次の駅に向かう。


電車の車内は、皆、思い思いにスマホを見て、周りを見渡しているような人は筆者を除いていない。


筆者は、そういう集団において、身長が186のため、頭一つ抜けている。





やがて、電車は次の駅に到着した。



プシュー



とエアーが抜ける音がして、ドアが開く。


ドアの近くにいた何人かが降りていく。


いつものように日常的な光景だった。




と、その時




動くな


という声が、日常の空気を切り裂いた。


ホームに降りた170センチくらいの男性は、いきなり何人かに囲まれてもみくちゃになる。


ドア付近にいた乗客が、皆、一斉に顔を上げる。

目の前の光景は、それぞれの世界から引き戻された現実だ。



抵抗するな、おとなしくしろ




乗客は皆、目を見開いている。





捕まったな、警察に

筆者は状況を理解した。

ほんの十数秒くらいの感覚だった。




プシュー



という音がして、ドアが閉まる。

電車は何事もなかったかのように、普段通り発車する。

取り押さえられた人と、とりまきの人をホームに残して。

そうして、現実の非日常は強制終了された。


ガタンゴトンガタンゴトンと、電車はどんどん走っていく。


皆、共有したこの現実をどうしたらいいか、わからない。

そして、乗客は、また頭を下げてスマホを見だした。

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