ジローの部屋

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【電車のひと短編⑧】乗り過ごして受け取った、にこやかな笑顔

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さて、今回は、乗り過ごしてしまったとある駅、での話。

では、どうぞ。





仕事で電車移動をしていた際、普段乗らない路線だったので考え事をしていたら、うっかり乗り過ごしてしまった。



特急が停まったその駅は、当時改修工事中だった。

どうやらバリアフリー化を進めるエレベーターの工事をしているようだ。


地上へ続く階段は長々と続き、途中二カ所の踊り場が設けてある。

そのため、ゆっくりと上がっている人は休憩しもって上がってきていた。


おそらく交通渋滞解消のために、高架になった駅は地上からかなり高い位置にあった。



同じホームの反対側は同じ方面に向かう電車が到着する。

そのため反対向きの電車に乗るには、向かいの反対ホームに行かねばならなかった。



長々と続く階段を降りて反対ホームの階段の方へ回って、ふと前を見上げる。


地上の明かりは、小さな四角になっていた。


筆者は視線を落とし階段を上ろうとしたとき、すぐそばでキャリーバックの取っ手を収め、上を見てため息をついた高齢の女性がいた。





筆者は学生時代、骨折をして松葉杖生活を余儀なくされた時期があった。

その松葉杖をついていたとき、荷物を持って階段のところまで来たときに、この高齢女性と同じように上を見上げて、ため息をついたことがあった。


そのとき、荷物を持っていた手が、ふっと軽くなる。

びっくりして荷物をみると知らない人の手に収まっていた。

そして、その人はにこやかな笑顔で筆者のやや後方を、ゆっくりと上っていく。

上に到着してお礼を言うと、彼は当たり前のように振る舞い足早に去っていった。





筆者はキャリーバックを持ち上げる。

彼女は驚いた表情をしていたが

行きましょうか

と声をかけるとにこやかな笑顔になった。


彼女は

ありがたいね

と言いながらホームへゆっくり上がっていく。

いえいえ

と言いながら、筆者は彼女の斜め後方をゆっくりと上っていく。

彼女は

ここの駅は何でこんなに階段長いんだろうね

と世間話をしながら、そして踊り場で少し休憩しながら、でも少し嬉しそうに上っていく。


そうして、小さな四角が少しずつ大きくなって、眼前は反対側のホームが広がった。



ホームには発車前の特急が停まっていた。

車掌の発車前のアナウンスが流れる。


彼女は慌ただしくキャリーバックを受け取って乗り込む。



プシューっとエアーが抜けてドアが閉まった。

電車がゆっくりと動き出す。



彼女はなんとか体勢をこちらに向き直し、会釈していた。

やはり、にこやかな笑顔だった。


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