ジローの部屋

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【ツインタワー編④】こだわりの、世界

いらっしゃいませ。ご訪問ありがとうございます。
こんにちは、ジローです。
いつもたくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!
おかげさまで、筆者はぼちぼちとこのブログを続けられています。


最近続いているツインタワー編。
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これ、完全に思いつきなのですが、今日で四つ目のお話になりました。
本当におかげさまで、懐かしい思いに耽ることができています。

では、前置きはこのくらいで、本日もツインタワー編をどうぞ。



193は女子がうらやむ白い肌を持っていた。
なかなかのもち肌である。
筆者は外で日焼けしたり、土にまみれたりしていたので黒かったが、彼は生涯室内競技であるから、日焼けがあまりなかったのかもしれない。

彼は入学当初は身体も大きく、剣道家なので背中が広く、かつ姿勢がいいので好青年という印象だったが、昨日の記事にもあったように、食べたいものを食べ、酒もかなり飲めるのでどんどんと肥えていった。

といっても、剣道はやっているのでそれなりに汗はかいているはずである。
しかし、彼の腹は日に日に大きくなっていっていた。
彼は時々、妊婦さんのように腹をさすっている。
しかしこれは、満腹時の彼に見られる動向で
「ジロー、うまかったな」というお決まりのセリフを言うときに見られる。

「193、アンタちょっと腹でてきたんちゃうの」
「そうや、ほれ、ちょっと生まれそうじゃろ」

彼は笑っているが、筆者は笑えない。
運動しているのに、その腹は邪魔だろう。



大学のクラスでは、毎年忘年会を城崎(県北の歴史ある温泉地)まででかけて、小さな旅館を貸し切ってやっていいた。23人ほどのクラスだったが、驚くほど出席率がよかった企画だった。
皆昼間は思い思いの風呂に歩いて出かけて、夜になったら旅館に集合する。
そして、境港出身のクラスメイトが地元からカニを取り寄せてきていて、大宴会が始まる。

筆者は193と行動をよく共にしていた。
下駄に浴衣で街を歩くのはなかなか気持ちがよい。
そして193は、その腹の出具合が浴衣になると妙に恰幅の良さに変わり、貫禄が出るから不思議なものだ。

彼は酒を飲むと身体が真っ赤になる。白い肌と真っ赤になった姿、そして生まれそうな腹がクラスの女子ウケし、胎動を確認するかのように腹をなでられていた。

筆者は痛風も経験した193にダイエットを勧める。
しかし、彼は
「筋トレはしんどいけぇ」
と敬遠するばかり。

全く、ダメだこりゃ。



この忘年会、車出しを決めて分乗して城崎に出かけていたが3回生からは、マイクロバス1台を貸し切りにして出かけていた。

193は、運転好きが高じて大型免許をとり、彼はバス好きだったのでレンタカー屋でバイトを始め、そこのマイクロバスをチャーターできるようになったからだ。
まだ、カーナビもなかったころ、マップルなどの大きな地図を持っていた筆者(部活の遠征で運転することが多く必要だった)と193は、クラスの企画の交通担当となり、道を調べたり、計画をしたりすることが多く、筆者は彼が運転する中で添乗員のように前に立ち、対向車のナンバーの下二桁でビンゴをしたりして長距離運転のサポートとバス旅行の盛り上げをやったりしていた。

こういう時の193は真面目にメガネをかけて白い手袋までつけて運転していた。
彼はドライバーになりきっている。



彼には1つのこだわりがあった。
それは、対向車に道を譲ってもらったとき(例えば細い道や路駐の車両があるときなどに対向車が先に停車して道を譲ってもらうような時)の返事だった。

ラクションをププッと短く鳴らす、手を上げる、頭を下げる、など人によって様々であるが、ここに彼のこだわりがあった。


ラクションを短く鳴らし、右手をグーにしてから、ゆっくりとパーになるように開いていく。それをしながらややうつむき加減に対向車のドライバーの顔を見る。


「どうや、ジロー。かっこいいじゃろ」
そう言って彼はマイカーでもこれをやっていたのだが、正直初めてこの極意を教えてもらった時は、何がカッコいいのか世界が高度すぎてわからなかった。


しかし、マイクロバスを運転する彼はひと味違う。
ちょうど狭い道で、対向車が待避できるスペースで停まってくれた。

これや、193。
筆者は、マイクでしゃべるのをやめて運転中の193を見る。
彼は、ギアをチェンジし、ドアミラーで確認を入れてからゆっくりと空けてくれたスペースへバスを走らせていく。
そして、うつむき加減になり対向車の運転手を見ながら、軽くクラクションを右手で鳴らした。そうして、その手を突き出してゆっくりと開き、少し上げて、お礼の合図をした。
対向車の運転手が笑顔で手を上げ、これに応えている。


な、なりきってるやん!

これか、これやったんか。アンタ、カッコええわ。



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