ジローの部屋

ジローの部屋

日頃の生活に、何かプラスになることを。

【電車のひと短編⑰】待合室の、大統領

いらっしゃいませ。ご訪問ありがとうございます。
こんにちは、ジローです。
いつもたくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!
おかげさまで、筆者はぼちぼちとこのブログを続けられています。


さて、今回は、電車で出会う、電車のひとの新たなお話。
今回は、17話目になります。
毎回、筆者が出会った人を1話ものでまとめた短編。

過去に出会った人達は末にあるリンクからどうぞ。


では、本日のお客さまを、どうぞ。










彼は右手でリズムをとっている。
左手で書籍を持ち、右足ではなく左足を組んで。






神戸本線から支線に乗り換える駅の待合室に入った。
部屋の両側にベンチが配置され、8人ずつが座れるようになっている。


普段この待合室に、数人がいることはあっても、混んではいない。
しかし、今日筆者が入ったときは8人入っていて、空いている席は1つだった。


筆者の前には、スーツケースを床に置き、ビジネス鞄を空いた席に並べた男性がいた。
彼は眼鏡をかけて、冬物の厚めのスーツをまとい、分厚い紺のマフラーを巻いている。



ふと、待合室で何か音が聞こえる。



ラジオでも流れているのかと思うと、その男性がひたすら何かを呟いていた。
筆者は何を言ってんのかと耳を澄まして、コトバを聞き分けようとしてみた。


すると彼はどうやら英語の書籍を読んでいたことが理解できた。
身なりからして、大学教授か何かだろうか。
50すぎているであろう髪の色だが量は保たれている。


彼はゆっくりと抑揚をつけて、右手でリズムをとりながら、ひたすら書籍を声に出して読んでいた。
普通の会話より少し小さめの声で。
しかし、1.5メートル程度離れた筆者には聞き取れる声で。


時折、語尾の単語を強調している。
なんでそんな言い方をするんだろう。


書籍は持っているものの他に、ベンチにカバーがかかったものが1冊、カバーを外したものが1冊。
どちらも新しくはない。



彼は一人で自分の世界に入っている。
なんというか、BBCのキャスターがちょっとゆっくりと話すように個々の単語をしっかりと発音している。

彼は書籍を持ち替えた。
今度は左手でリズムをとっている。





もう、何本も電車は止まって通り過ぎていった。

彼は書籍を持ち替えただけでまだまだ読み続けている。
足は組み代えない。




1人、2人と待合室の人が減る。
そして、とうとう待合室は筆者と彼だけになった。




彼の読み上げは続いている。

ただ、少し疲れが見えだした。
声のハリがなくなっている。


ここまでして読まないといけない理由はなんだろう。


筆者の興味は最高潮に達していたが、残念ながら帰らなくてはならない。
仕方なく筆者は立ち上がり、乗り換えることにした。

そのとき、彼の読んでいる本の表紙が指の隙間から見える。





「バイデン就任演説」

あの手は、あの身振りは、大統領だったのか。



surrealsight.hatenablog.com

ブクマコメントありがとうございます!
>まっこおばさま(id:makkosan70)
最初は何やってんだろうだったんですけどね、なるほどって😏たぶんこの人は日課にしてそうな感じでした。

>みみこびと(id:mimikobito)さん
見えました?私の視線!
じっとはみてませんよ。印象に残りやすかったのですけど、もうちょっと英語力があれば話は早かったかも😅

>テイルズ(id:MyStory)さん
さらに発展、ありがとうございます😁
いやいやいやいや、なんなんでしょうか。読み切りたかったのかな、とも思いました。プロフェッサーじゃなかったらなんなのか。これが終電くらいになってくると一気にホラー感がましますが、駅前留学の学生であれば応援したくなります👍

>ユウヨ(id:byte0304)部長
まさに、ザ・ワールド!
時が止まったかのような、そこだけの世界が動いているかのような、そんな空間でした😁


お問い合わせは下のリンクから。
お問い合わせ - ジローの部屋
たまにポチッとお願いします🙇
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村