さて、今回は電車のひと編。
過去編は以下の記事からどうぞ。
さて、本日のお客様は、初老の男性。
では、どうぞ。
コロナで通勤に制限がかかる以前の頃。
時々、電車には小さな子どもを抱っこした女性が乗っている。
筆者も子どもが小さかった頃、抱っこ紐で何度も電車に乗ったことがあるが、子どもが泣き出すとかなり辛い。
上手く泣き止めばいいが、そんな大人の事情に子どもはかまってはくれない。
泣き止まなかったら最後、周りの白い目が突き刺さる。
ただでさえ、抱っこで熱いのに、さらに変な汗をかくんだよな。
筆者から、彼女までの距離はドア1つの空間があった。
ちょうどとなりの対角線のドアの付近に、彼女は立っていたわけだ。
筆者は立って資料を読んでいた。
電車は、レールを刻む音を立てている。
しかし、違う音が、しばらくして立った。
子どもが少しぐずついた声を出す。
声はやはり、彼女のところから聞こえてきた。
周りのサラリーマン風の男性は、何人かが怪訝な顔をしている。
そんな表情見せるなよ、と思いながら、筆者は資料に目を落とした。
すると
どうぞ、どうぞ
と声がする。
資料から目をあげると、声からすると初老の男性と思われる、やや斜め向いた背中が、前向きに抱っこした赤ちゃんを連れた彼女に、席を譲っていた。
まわりは無表情にスマホを覗くサラリーマン。
彼女は遠慮したが、しかし席を譲りたいその男性は
まぁいいから
と。
そして
かわいいね
と声をかける。
まだしゃべれない子どもは少し声をだす。
何回か赤ちゃんが声を出すと隣のサラリーマンが、ちらっとその様子を見た。
無表情な表情が崩れて
こんにちわ
と声をかける。
赤ちゃんは
あー、あー
と返事が返していた。
席を譲った、初老の男性は嬉しそうな声で、
何ヵ月かな
と話しかけていた。
こちらから見える彼女は、少し安心した表情をしている。
電車は大きな駅に到着した。
電車が停まると、立ち上がった母親と交代して、初老の男性がまた席に座る。
こちらから背中しか見えてなかった彼は、スマホを見つめるまわりとは、違った表情をしていた。
追伸
ジローの部屋は、開設から気がつくと4ヶ月が経過していました。
本当にたくさんのご訪問ありがとうございます。
またのお越しを、お待ちしております。
お問い合わせはこちら surrealsight.hatenablog.com いろいろな人のブログがあるので、こちらもどうぞ。 ブログアンテナ