ジローの部屋

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【電車のひと短編⑤】なんで、っていう表情

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こんにちは、ジローです。

たくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!

おかげさまで、ぼちぼちとこのブログを続けられています。



さて、今回は、電車のひとの短編です。
何本か書いてて、電車の一幕が何本か出て来たので短編集としてみました。
前回は、英語少女とランの話
surrealsight.hatenablog.com
電車に関する過去記事はこちら⬇
surrealsight.hatenablog.com
surrealsight.hatenablog.com
surrealsight.hatenablog.com
そして、今回はまた別のお客様です。


では、どうぞ。






その人はうつむき加減で電車の優先座席に座っていた。


小柄な感じの60歳くらいの女性。
スマホを持っている。
ゆっくりと指が動いている。


電車は大きな駅から発車した。
普通電車のため、各駅に電車は停車する。
一駅が過ぎ、次の駅に電車は向かっていった。


彼女はまだ、うつむき加減でスマホを見ている。
集中しているのか、顔とスマホが近い。


やがて電車は、次の駅に到着した。


プシューと、エアーが抜けてドアが開く。


彼女は、音を聞いてはっと我に返り、周りを見渡す。


そして、降りるべき駅だったことに気付いたのか、慌てて立ち上がってドアの方へ向かいだした。


ドアのそばに人が立っていた。


全身黒のスーツに黒のコート。
おまけに黒のマスクをしている短髪の背の高い男。


彼女はぶつかりそうになって、ちらっと上目遣いをした。
黒づくめの男と目が合い、慌てて目をそらす。
そして黒づくめの男を避けるように、電車から出ようとした。


その時、彼女は黒づくめの男に、さっと腕を捕まれた。


引きつった顔。
明らかに、なんで、という表情。


黒づくめの男は座席に残されたモノを拾って、なんでという表情の彼女に手渡した。

それは、パスケースに入った定期だった。



ちょっと待って、これあなたのモノでしょう


一瞬の間があった。
彼女が状況を理解するのに、1,2秒。


そしてやや、おびえた顔が安堵する。
しかし、彼女はまだ警戒を解いていない。


あ、ありがとうございます

と小さな声で、やや固い笑顔でつぶやいた。


彼女は一礼して、きびすを返し、ホーム向かいの乗り換えの電車へかけていく。


やれやれ、間に合ってよかったな、と黒づくめの男は安堵した。

そして、黒づくめの男は思う。

彼女は筆者の職業を、

たぶん、
おそらく、
いや間違いなく、

勘違いしている…。


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