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さて、久しぶりの電車のひと編となりました。
このお話は、筆者が通勤などで実際に出会ったり、居合わせた人達のフィクションではないリアルなお話を綴っています。
今日はその、19番目のお話。
過去のお話は、末尾の総集編からご覧下さいませ🙇
そして、今回のお客様は、筆者が立っていたドアと反対側のドア前に立っていた、後ろ姿の若い女性の方。
では、どうぞ。
ガタンゴトン、
電車はレールのつなぎ目を通過する度に、規則正しい音がする。
彼女の傍らには、かけていた薄手のブランケットが床についてしまっていたベビーカーがあった。彼女はそれに気づいて、そっとしゃがみこみ、床についたブランケットの端を持ち上げて、ベビーカーの手すりにそっとかけ直した。
そばで父親がそれに気づき、頭を下げ、彼女は会釈を返している。
一見して20代半ばの彼女は、ベビーカーに視線を落とした。
まだ、1歳ちょっとくらいだろうか。
その先には、まっすぐな、つぶらな男の子の瞳がまっすぐ彼女を捉えている。男の子は声を出さずに、キャッキャと手足を動かして彼女に微笑むと、彼女も声を出さずに、表情を崩して頷きながら男の子に話しかけだした。
2人は声を出さずに、話している。
まるで、共通の秘密の言葉があるように。
電車は大きなターミナル駅に到着した。
ベビーカーを持っている父親がドアに向かってベビーカーの向きを整える。
彼女は道を譲るように、少し、後ろに下がった。
父親の後ろには女の子が、ちょこんと立っていた。
水色のワンピースを着た、3歳位の女の子。
彼女は女の子に気付き、さっき話していた男の子の姉だと悟ったようだ。反対側のホームに着いた電車へ向かう父親から、離れまいとついていく女の子の後ろに彼女はそっと位置して、ベビーカーを押した父親に続いて彼女もまた反対ホームの電車へ乗り換えようとしているようだ。
乗り換える電車のドアの前で父親が振り返る。
父親は女の子の様子を見て声をかけ、ベビーカーの前輪を浮かし、そして乗り込んでいった。女の子はドアの前で一度立ち止まり、よいしょっと、まだ、たどたどしい感じで左足をあげた。
すると、その後ろにいた彼女はそっと膝を折ってその背中に手を差し伸べた。
触れることのない右手が、小さな背中に重なっている。
まるで、その位置を用意していたかのように。
よいしょ、と女の子がドアの段差を乗り越えた。彼女はそれを見守ると、折った膝を伸ばし、差し伸べた手を戻して、女の子に声をかけて、離れていく。
不意に「プシュー」というエアーの抜ける音がして、視界の両側からドアが重なってきた。ずっと、追いかけてしまった光景に、急に幕引きがきたように。
電車はゆっくりと動き出した。
微笑ましい優しさを、ホームに残して。
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ブクマコメントありがとうございます!
>まっこおばさま(id:makkosan70)
微笑ましくて反対側で釣られてしまいそうになりました。1人でニヤけてたら変な人ですからね😅
>テイルズさん(id:MyStory)
おかえり!少し余裕が出てきたからか、また出会えるようになってきました😊こういう微笑ましさは、またお伝えしたいなって思いますね。
>norikoさん(id:non704)
何のことはない、ちょっとした一コマのキリトリでした。そう言っていただけると、幸いです✨
>ガネしゃんさん(id:yu_me_po-lly)
誰にでも出来るって、本当に尊敬します。
その優しさが人に伝播していけば、いい世の中になると思うんですよね✨