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さて、今回は、電車のひと編。
この話は、読み切りのお話。
気がつけば、もう13話目になりました。
過去記事をまとめた総集編はこちら↓
surrealsight.hatenablog.com
では、どうぞ。
電車は、ゆっくりと出発した。
そこは阪急電車の最後尾車両。
今日は車掌室にカーテンが下ろされておらず、ガラス越しに外の世界が後方へと広がっていた。
止まった状態で見るとただの茶色い鉄の棒は、動いた状態で見ると流れるような曲線美になっていく。
平行に走っていく2本の線は後方へどんどん伸びていき、途切れることはない。
踏切の警報機の音が真横から聞こえたあと後方へフォードアウトしていき、遮断機が上がって女子中学生が歩き出した。
女子中学生との距離は一気に後ろへ離されていく。
電車の通過によって、止まっていた時間が動き出す。
その動き出す時間の瞬間が、まるでデジャヴを見ているように何度も何度も繰り返されていた。
車掌室の中の彼は、白手袋をはめ、帽子をかぶり、壁に取り付けた時刻表のようなものを指でなぞって時間を確認していた。
彼が後ろを振り返るときは、反対の上り列車との離合時に、同僚へ敬礼をするときだけだ。
電車は、高架に差し掛かった。
戸建てやマンションなどの住宅街しか視界に映らなかった光景は、観覧車に乗っているかのようにゆっくりと上がっていき、やがて街を見下ろしていく。
朝日が差し込んだなだらかな坂に立っている住宅街。
それらを下っていくと、高速道路の高架があり、その向こうには大きな工場が構えて、海が広がる。
一瞬、視界は駅のホームに遮断された。
しかし、それは本当に数秒のことで、また眼下にはさっきの光景が広がっていく。
車掌室の彼は、また時刻表のようなものを指でなぞっていた。
まもなく電車は、ターミナル駅に到着する。
海は大きなビルやマンションで隠れていく。
車掌室の彼は、白手袋をはめ直し、壁にかかったマイクを取って、聞き慣れたアナウンスを始めた。
何人かのつり革を持っている乗客は、片方の手で持っていたスマホをポケットにしまい、窓の向こうへ遠い視線を投げかけていた。
電車は、駅へと流れていく。
プラットフォームから聞こえるアナウンスがだんだんと聞き取れるようになっていき、後方へ流れていた直線が、鉄の棒に戻っていった。
車掌室の彼は、やはり時刻表のようなものを指でなぞる。
そして、壁のボタンを押して、電車の片側から勢いよくエアーが抜け、たくさんの人が流れていった。
そう、それはいつもと変わらない、朝の時間。
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