ジローの部屋

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【ツインタワー編完】あのな、ちびりそうになったんやぞ

いらっしゃいませ。ご訪問ありがとうございます。
こんにちは、ジローです。
いつもたくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!
おかげさまで、筆者はぼちぼちとこのブログを続けられています。


想像を超えて4つの話になったツインタワー編。
こうして書いてみると、部活以外の時間でずいぶんと一緒にいたんだなと気付かされました。
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今回は、5つ目の最終話となります。
これにて彼のお話は一旦終了。

では、どうぞ。 






筆者の大学は初等教員の養成課程。
小学校の先生の免許取得が必修で、中学高校の免許は選択となっていた。
つまり、全教科の授業がある。


筆者と193が苦手とするところは、音楽。
単にピアノだけ弾く、確かにこれだけでも初心者であった筆者らにはかなりの努力が必要になるのだが、これに歌を合わせるとなると至難の業になる。
加えて、193は十八番以外の歌が非常によろしくない。
これにはピアノの講師も、苦笑していた。
何せ、本人は必死だから、まわりで聴いている筆者らは笑いをこらえるので必死になる。
193は
「難しいのぅ、ジロー」
と言っていたが
「現場に出たら、専科の先生がおるけぇ、大丈夫じゃろ」
と意を介さない。

しかし、筆者らにはこの音楽のテストは卒業するための超えなければならない壁だった。


筆者の通っていた大学には、スタンドピアノが1畳ほどの部屋に置かれた練習室が20室ほどある棟があった。
そこは当時24時間開放されていて、いつでも学生が練習することができる。
昼間の講義がない隙間時間やバイトが終わった夜にでも、いつでも誰でも練習ができた。


このピアノのグレードテストが近づいてきたころ、日頃の練習だけでは課題曲のクリアが難しそうなので、ちょっと夜に練習しようか、という話になった。

お互い部活やバイトがあるのでそれらを終わらせて、寮でひとっ風呂浴びてから、ピアノがある棟に集合した。
もう時刻は0時近い。
人気がない棟に二人で入っていくと、1台のピアノの音が響いている。
この環境に慣れていなければ、かなり不気味な光景であるが、誰か先客がおるんだろう、という話を2人でしながら階段を上っていった。
階段を上っていくと、ピアノの音が鳴り止んだ。
筆者らは特に気にすることなく、3階の練習室に向かって歩いて行く。


確か季節は秋だった。
少し肌寒くなってきているときで、集中してさっさと終わらせようぜ、というような話をしていたと思う。
3階までの階段を上りきり、廊下へと2人並んで曲がったときだった。

ちょうどその瞬間にこちらへ曲がってきたものがいた。

「うわっ」
と不意打ちをくらった筆者らが声を出して立ち止まる。

同時に
「ひっ」
と引きつったような女性の声がした。


薄暗い街灯に照らされるパーカーのフードをかぶった女子。
眉毛はない。
筆者はとうとう出たか、と心臓がバクバクしていたが、その女子は動きを止めてから下を向いてそそくさと階段を降りていった。

筆者は193と
「ビビったなぁ」
と話し、どこのクラスの子やったんやろな、と話をした。
そして、少し音漏れする独房のようなピアノの練習室にて、それぞれ練習していった。




後日、無事2人ともピアノの弾き歌いのグレードテストをパスして、クラスの大阪出身の女子とピアノの練習の苦労話になった。筆者らは、そういやこんなことがあってんけどさ、という話を切り出した。彼女は興味津々で話を聞いている。
そして、彼女は心霊話じゃないことに気付いて、
「なんや」
とややがっかりした。
193は
「あのな、ちびりそうになったんやぞ」
と彼なりにその恐怖感を説明していたが、彼女はそれを一蹴した。


「アンタらな、よぉ考えてみ。
寒い夜中に、その子は1人で練習にいってるわけやろ。その子なりに努力してるわけやん。そして、日付変わるまでに自分の寮の部屋に戻ろうと帰りよったわけやろ。
そのタイミングで、階段でばったりアンタらと会ったわけやん。
そりゃ、そんな時間すっぴんに決まってるやろ。
しかも、他の女子ならまだしも、ガタイのいい大男2人がいきなり出てきてみ。
そりゃその子にとっちゃ完全に予想外やし、身の危険感じるやろ」


筆者と193は顔を見合わせた。
うーん、正論だ。
自分達がでかかったことを、忘れていた。



PS
一部の読者様のツボにはまった193のお話は宴もたけなわでございます。
思いつきの思い出にお付き合い下さいまして、皆様本当にありがとうございました。


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