ジローの部屋

ジローの部屋

日頃の生活に、何かプラスになることを。

夕食の、デジャヴ

今回は、夕食時の一コマを。


では、どうぞ。















片田舎にあった大学の一年目の寮生だった頃。

その大学は小高い丘にあり、どこに行くも行きしなは緩やかな下り坂、帰りはひたすら上り坂という場所で、まだ車がなかったのでチャリだと近くのスーパーから帰ってくるには、30分ほどの時間と体力をもっていかれる。


食べることに関しては、土曜日は学食が昼までは営業していたが、日曜日はほぼ定価売りの大学生協も休み。

誰かに頼めばいいのだろうけど、日曜だったその日は、他の要素もあってさすがに野暮ってものだった。

他のことをして空腹の気を紛らわすが、夕方になるとさすがにキツくなってきた。
元々保存食がほとんどない部屋で、カップ麺もない。米がかろうじて、かき集めて残り0.7合程度あり、卵雑炊の素みたいなものを見つけた。


そこに用量よりも水の量を増やし気味にして炊飯してみる。出来上がりは中々いい匂いがして、火傷気味になりながらハフハフと食べると、すぐになくなった。


がらんとした部屋に、雑炊の匂いだけが残っている。


腹が鳴る。
焼け石に水、だった。


だから、寝ることにした。
なんとか明日まで、耐えきればいい。
なかなか寝付けないが、寝るしかない。



どれくらい時間が経っただろう。

布団をかぶり込んでいると急にガチャリとドアが開く音がして、明かりが点いた。


ドスの利いたでかい声が、開いたドアの音のは後から追いかけてくる。

『メリークリスマス』

そこにいたのは、白いヒゲの恰幅のいい親父ではなく、赤ら顔のラグビー部の0.1㌧の先輩だった。

『食ってでかくなれ』

と言って、ケンタッキーの紙箱をテーブルに置いてきたので、慌てて断ろうとしたが制止される。


がらんとした部屋は、紙箱の中身の匂いが立ち込めだした。


開けてみると3ピースほどのフライドチキン。
手に取ってみると、冷めてはいるけど温もりがまだ少し残っている。

そのままかじると、冷めていたせいか少し時間差で肉のうまみがゆっくりと広がってきた。

美味かった。
何でかわからないけど、めちゃくちゃ美味かった。



食卓に、フライドチキンがあった。
温かいそれは、確かに美味い。
でもやっぱり、あの時のものが冷めているにも関わらず一番美味かったな。


ご訪問ありがとうございました。
またのお立ち寄りを、お待ちしております🙇



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ブクマコメントありがとうございます!
>まっこおばさま(id:makkosan70)
思い出引き出し✨これがたくさんあると、懐かしさのある時間が再生されますね😊
現在も見ながら、折に触れて✨
>ウサピリカ(id:akirosso)さん
真っ暗なはずなのに、いきなり電気がついてわけがわからない中の出来事でした!
後輩には同じシチュエーションはさすがにしてないんですけど、でもさりげなさはちゃんと引継いでいきました😆
>テイルズ(id:MyStory)さん
おかえりなさい!久しぶりの「らしさ」、みたいな記事になりました。ふと思い出した一コマをキリトッて✨クリスマス前に思い出したら、よかったのかも知れませんが、それはそれで😊
>相続コンサルタント(id:egaosouzoku)さん
学生時代にしかなかった感覚ですけど、久しぶりでしょうか。そんなときもあったなぁ、ということが25年くらい経って感じられるようになってきました。