ジローの部屋

ジローの部屋

日頃の生活に、何かプラスになることを。

伝統が、伝えるもの

いらっしゃいませ。ご訪問ありがとうございます。
こんにちは、ジローです。
いつもたくさんの星、ブクマやコメント、本当にありがとうございます!
おかげさまで、筆者はぼちぼちとこのブログを続けられています。


さて、今回は、伝統の受け継ぎ、の話。

筆者は、学生時代ラグビー部に所属していました。
部には、なんというか独自の伝統があります。
たとえば、こんなもの
surrealsight.hatenablog.com
今回は、また違うものの、お話です。

では、どうぞ。











学生時代、最初は電車通学をしていたが、約2時間の通学時間は部活をやるにはかなりきつく、学生寮の追加募集に応募し、確か6月ぐらいから寮に入った。


大学の寮は、風呂トイレ共同で洗濯機は水量も共同。
四畳半ぐらいの、やや長細い部屋にスチール机とベッドが置いてある簡素の部屋だった。


1回生の頃は免許も持っていなかったので、ちょっと割高な大学の生協で何かを買うか、持っている先輩らに買い物に連れて行ってもらうかしないと、寮は陸の孤島と化す。


体調不良で寝込んでしまったような時は、腹が減るが買いに行く気力がなく、なんとか寝て過ごして空腹を紛らわすぐらいしかなかった。


ある時、筆者は熱を出してしまい、1日学校と部活を休んだ日があった。
寝て起きて寝て起きてを繰り返し、なんとか自販機で水分だけは買って、やり過ごしていた。


昼間寝てしまうため、夜中変な時間に目が覚める。
水分を取っていたため、トイレだけは行かなければならず、部屋のドアノブを開けて廊下に出た。


するとドアノブに、白いビニール袋がかかっており、ヨーグルトやパンと一緒に、小さな紙切れが入っている。
それを取り出すと

「食欲あるか、なくても食べとけ」

と、下の階に住んでいる先輩の字で、そう書いてあった。


まだ熱があった筆者は、ぼーっとした頭のままで、しばらく立ち止まり、そして自分の部屋のドアを開けて、ヨーグルトを食べてみた。

「あ、おいしい」

思わず声を出してしまい、紙スプーンで次のヨーグルトをすくう。

ヨーグルトは一気になくなってしまった。



翌朝、頭もだいぶすっきりし、朝風呂に入っていると、ヨーグルト差し入れてくれた先輩が風呂に入ってきた。


筆者は、お礼を言うと

「気にするな、俺もされてきた方やから」

と言っていた。





新入生が入ってきて、各部の勧誘が始まる。


学生の8割ぐらいは寮に入って生活しているため、新入生は必然的に
「晩御飯はどうするか」
という命題に毎日戦っている。


当然のことながらその命題を熟知している、各部の連中は、こぞって「飯ツアー」と称して、各部の練習が終わった後に新入生に晩飯をおごりながら、関係を作って勧誘を進めるようなことをしていた。



ある年の勧誘の時期、筆者から見て3つ下の新入生が、どうも熱を出していたようだった。


まだ、筆者のいたラグビー部に入るともなんとも言っていなかったが、他の新入生からその話を聞き、帰りにコンビニに寄って、ヨーグルトとかを買って、彼の家のドアノブにかけることにした。
ちゃんと小さなメモを入れて。






彼と筆者は、都合1年しか同じラグビー部員として時間を共にすることはできなかった。


ただ、筆者が卒業して現役の四回生が書いた会報を見る機会があった。

そこにはその編集に携わった部員が、最後のページに編集後記を記している。

それを読むと、

「思い起こせば…」

という感じで、彼が入部した経緯を書いているものがあった。


「新入生でラグビー部や他の部からも、勧誘を受けていた頃、自分は熱を出した。
 どこにも行けなくて、寮で寝ていると、トイレに行こうとした時にドアノブに買い物袋がぶら下げてあったのに気がついた。
 そこにはヨーグルトとかの食べ物と先輩からの1枚の小さなメモが入っていた。
 まだ入部もしていなかったあの頃の自分に、ここまでしてくれるのが嬉しかった」


という内容だった。




伝統は、しっかりと伝わっていた。



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